iPadデジタル雑誌の日米比較(前哨戦)

 

iPadの日本での発売まで10日を切ったね。まさに、カウントダウンという感じ。この新しいデバイスには個人的にいろんな期待があるのだけど、やっぱり、もっとも気になるものの1つはデジタル雑誌だろうな。先々日、iPhoneですでに国内の電子雑誌を販売していた「マガストア」が早々とiPadに対応した。もちろん、すぐにインストールして何冊かの雑誌を買ってみたよ。使い勝手、読み心地はどうか。デジタルならではの試みはあるんだろうか。そのあたりを、米国の『TIME magazine』と比較しながらチェックしてみたよ。

これが国産デジタル雑誌ポータルのマガストア。

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書店の面置き棚のようなインターフェイスだね。新着、おすすめ、ジャンル別といった閲覧方法があり、「中吊り」を選ぶと、電車の中吊り広告がそのまま出てくる。これは結構、面白いかもね。購入した雑誌は「My本棚」で見ることができるんだけど、iPhoneで買ったものは自動的にiPadのMy本棚にも登録される。あ、もちろん、同一アカウントで設定した場合ね。

さて、オレが最初に買ったのはこれ。『GQ Japan』の6月号ですね。

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うん、こうして縦置き画面で見ると、紙の雑誌とほぼ同じ印象だね。やっぱりiPhoneだとちとキツかった。ちなみに、横置きにしてみると、うん、予想通り見開きになるね。 特集ページの扉なんかは見開きが多いから、こうして横にするのがいいんだろうね。

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ただし、このまま読もうとすると文字がやたら小さくなってしまう。すでに老眼鏡を使っているオレの世代には横置き&見開きは無理って感じかな。縦置きの1ページ表示でも、 フォントによっては拡大が必要になってくるものね。

お次はページめくりのインターフェイス。画面を一度タッチすると上部にツールバーが現れる。その中のリストアイコンをタッチすると、テキストだけの目次が出てきますね。もちろん、見出しをタッチすれば該当のページにジャンプルするよ。ただ雑誌の場合、どうしてもテキストの目次じゃあ記事がイメージできないというか、なんか面白味がない。

そこで、ツールバーの別のアイコン、複数のページが重なっているような感じのをタッチしてみると、iTunesのアルバムアートで見慣れたあのインターフェイスが登場する。

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うん、こっちの方がなんとなく気分が出るよね。左右にスワイプして見たいページを探す。見つかったらタッチしてその記事へジャンプ! 使い勝手としては悪くない。ほかに注目すべき点は……。

うーん、残念ながらもうないんだよね。あとはひたすら読むだけ。デジタルならではの仕掛けがいろいろあるわけじゃない。まぁ、まだiPad発売前だからね、これはまだ、iPhone向けとして評価しなくちゃならないのかもしれない。とにかく現時点では、紙の雑誌をPDF化したって域からは出ていないね。

この時点で気になった点を挙げておくと、

・ページをめくるたびにプログレッシブJPEGのような、最初ぼやけて次第 にフォーカスが定まる感じの待ち時間がある。時間にすると1秒程度だが、どうもまどろっこしく感じてしまう。

・紙のレイアウトそのままなので、キャプションなどの級数を落としたテキストが小さすぎて読めない。iPhoneならまだしも、iPadで拡大しながら読まなきゃならないのはナンセンスだと思う。

・なぜか広告が全部抜けている。おそらく、契約の問題やらいろいろあるのだろうけど、現時点ではクライアントから金を取らずに、タダでもいいから広告を載せておいた方が、後々おもしろい展開に結びつくんじゃないか。電子雑誌の醍醐味って実は広告にあるんじゃないかと思うから。

まだまだ課題はたくさんありそうだけど、なにはともあれ、こうしてデジタル雑誌がスタートしているのは大歓迎。日本でもいろんな取り組みがなされていくことでしょう。いまは批判よりも期待を大きく持つ方がいいかもね。

課題と期待という意味も込めて、1か月前にiPodが発売された米国の好例も見てみようね。あちらでは老舗かつ大メジャーの『TIME magazine』。

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縦置きの表紙を見る限り、マガストアの雑誌とさほど変わりはない。ところが、この時点でちょっとした仕掛けが打ってあるんだね。画面下のステータスバーに注目。一番右に「NEWSFEED」というのがあるでしょ。お察しのとおり、ここをタッチするとTIME.comに飛んでというか、覆い被さるようにウェブサイトが表示される。雑誌に戻るには画面右上の×印をタッチすればOK。

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紙の雑誌は週刊、ウェブサイトはリアルタイム、そのどちらも見せて相互に補完関係を作る試みだね。ちなみに、ここで表示されるウェブページのレイアウトはiPad用に最適化されていたりする。やっぱり、デジタルならこのくらいは朝飯前でやってほしいよね。

さて、ここからはめくるめくデジタル雑誌ワールドが繰り広げられるよ。まずは、最初にこんなコーナーが登場する。

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「Help Guide」すなわち、マニュアルですよ。なぜそんなものが必要なのか? 実は、TIMEって独特の構成で記事やページが並べられているからなんだね。基本的には横置きで使う。使い方のルールはこんな感じ。

・同一の記事や特集内でページをめくる場合、上下にスワイプする。

・別の記事や特集に移動する場合は左右にスワイプする。

これ、個人的にはものすごくいいインターフェイスだと思うよ。せっかく縦横のスワイプが使えるんだからね。複数のページからなる「記事」「特集」をブロックのような概念で束ねているわけだね。うん、これはうまい!

さらに、マニュアルにはアイコンの説明がある。注目すべきは「Play video」と「Play slide show」だね。いったい、どんな場面でこれらのアイコンが登場するのか? 期待に胸を膨らませながら、ページをめくってみましょう。

最初の記事から順に読むなら、先のルールに従って縦横にスワイプすればいいだけ。そのほかに、こんなインターフェイスも用意されている。

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画面下に記事のサムネイルがずらりと並ぶ。ここでも先の構成が生きているよね。全部のページを並べるのではなく、あくまで記事や特集の単位。だから、サムネイルの数も少なくてすむ。左右にスワイプして気になったものをタッチ。なかなかの使い勝手ですよ。さらに、広告記事には「ADVERTISEMENT」としっかり表記されているのね。記事と広告の区別が付きやすいだけでなく、あとで「あの広告どこだっけ?」と探す場合にもとても便利。この辺りは使ってみないと良さがわからない世界だね。

まず驚くのが文字の読みやすさだね。こちらは、紙とはまったく違ったレイアウトで組まれていて、文字が小さすぎるなんてことは皆無。あと、写真がものすごくキレイなんですよ。おそらく、iPadに最適化しているんだろうね。基本的な文字、グラフィックで不満はなしです。

さて、お待ちかね。リッチコンテンツの世界だね。本当にいろんなところに動画が使われているんだけど、オレがもっとも感動したのはこの記事。「10 Questions」のコーナーです。

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文字通り10の質問。インタビュー記事だね。この号に登場するのはグラミー賞を受賞したアリシア・キーズ。彼女のプロモーションビデオやライブビデオなんかを交えながら、インタビューが進んでいく。3問目で「あなたが一番影響を受けたピアニストは?」という質問があるんだけど、アリシアが「ニーナ・シモンです」と答えるのね。するとすかさず、ニーナ・シモンの演奏ビデオが流れる。ここがもっとも感動した場面だね。

どうだろう。これがもし、テキストだけのインタビュー記事だったら。ニーナ・シモンを知っている人はいいけど、そうでない人にとっては読み飛ばされちゃう部分だよね。「ああ、そういう人がいるんだ」程度にね。ところが動画で本人の演奏を見たら、「おお、この人さすがにすげぇなぁ」と思えるじゃない。この、共感度が圧倒的に高まってしまうってのが動画の強みだよね。

オレはこの記事を観ながら、雑誌ってまだまだ計り知れない可能性があるんだなと思ったよ。ちなみに、ビデオはフルスクリーンでも楽しめるよ。

お次はスライドショー。たとえば、このページ。

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写真の左下についているのがスライドショーのアイコンです。こいつをタッチすると、こんな風になる。

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ただ単にフルスクリーンになっただけじゃないよ。スライドショーだからね。画面を左右にスワイプすると、この記事に関連する写真が何枚も閲覧できるのね。これもすごいと思うよ。紙の雑誌は限られたスペースじゃない。だから、たくさんの写真を載せようと思っても全部は無理。編集者は泣く泣く、数枚をチョイスするしかない。ところがね、デジタルの世界なら基本的にほぼ無制限で見せられるんだよね。アウトテイクという概念がなくなっちゃう。うーん、これも1つの大きな可能性だね。

さて、最後はマガストアで課題として挙げさせてもらった広告。いくつかあった中でオレが気に入ったのがこれ!

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モトローラ製のスマートフォン「ドロイド」の広告だね。ちょっとわかりにくいけど、スマートフォンの中が動画になっていて、タッチするとおそらくTVCMと思われる映像が流れる。これが紙面というか画面のデザインとすごくマッチしていて未来的でCoolな感じに映るんだね。うーん、思わず欲しくなるというか、物欲を刺激されますなぁ。

まだ、どの広告も個人的に期待してた「購入画面への誘導」まではさすがにやっていなかったね。先のTIME.comの画面のように、ECサイトをオーバーラップさせれば不可能じゃないと思うけど、ま、いろいろな事情があるんでしょうね。

もちろん、TIMEがやっていることがすべてじゃないし、媒体によって効果的な手法とそうでないものがあるはずだよね。ただ、ここで実現していることは、デジタル雑誌における基本の型みたいに捉えてもいいように思うな。最低限、このくらいはやってよねって感じなのかな。

いずれにしても、日本ではこれからが本番。今回のタイトルも「前哨戦」としたのはそういう理由から。読者がワクワクして、なにかのアクションを起こさずにはいられなくなるような楽しいものをたくさん世に出してほしいね!

iPad版マガストアをiTunesで見る!

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4 Responses to “iPadデジタル雑誌の日米比較(前哨戦)”

  1. ごっつ 2010年5月19日 at 12:52 PM #

    電子雑誌は、やっぱり動画で見せられるというのが一番の魅力でしょうね。音楽はもちろんですが、おいしいお店などでは湯気やお肉を焼く音、店の雰囲気、今まで写真だけだったものが、もっとわかりやすい形で伝えてあげられる。そして小粋な店主なんかにはお店紹介に自らしてもらって。。。インタビューも紙面上で記事を見ながら再生できる。
    情報が多くなる分、編集者に求められるものは高くなるし、腕のみせどころとも言えそうです。

  2. harada 2010年5月19日 at 7:37 PM #

    私が知りたかったことをいろいろと、ありがとうございます!
    ↓このサービスも気になります。手塚治虫作品がいっぱい。
    iPad向けに「電子貸本」サービス 6500冊をレンタル
    http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1005/19/news059.html

  3. zono 2010年5月19日 at 11:55 PM #

    ごっつさん、このブログ最初のコメント、ありがとう! ここ数日、早くコメント来ないかなぁと待ちわびていましたよ。うれしい!
    そう、編集者の役割が変わってきますね。1つ上の視点、プロデューサー的な感覚を鍛えておかなくちゃと思いますね。

  4. zono 2010年5月19日 at 11:58 PM #

    haradaさん、コメントありがとう!
    電子貸本、おもしろいと思います。しかも、ウェブサイトのデモ画面がオレの大好きな漫画『カイジ』だったのはうけました(笑)。
    こちらは電子書籍の分類になりそうですね。雑誌の方はウェブサイトあり、アプリありで可能性が広い分、どこを狙うか、なにをコアにするかなど、知恵を絞るポイントも多岐にわたるんでしょうね。

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