iPadが発売される前から、「この機器は最高の楽譜ツールになる」と予想されていたよね。もちろん、多くの人の読みは見事に的中して、楽譜PDFのビューアーから、TabToolkitのような高機能なものまで、ミュージシャンが泣いて喜ぶ便利なアプリがどんどん世に出ている。
でも、すべての人が楽譜を読めるわけじゃない。実際に、ギターで弾き語りをするんだったら、歌詞とコード譜があえれば充分なんだよね。今日紹介するのは、楽譜ツールとしてのiPadの良さを充分に盛りこみながら、多くの人が使えそうな歌詞+コード譜に特化したアプリ。演奏する人にとってうれしい機能が満載ですよ!
オレもPDF楽譜ビューアーをいくつか持っているけど、ただ譜面をiPadに表示するだけだと、それほど便利には思えない。註釈を付けられたり、手書きのマーカーを入れられたりする機能もそれなりに使えるけど、やっぱりミュージシャンが求めているのは「ライブで使える」やつじゃないかな。
その意味で、このアプリは間違いなく演奏家の気持ちを充分に汲んで創られた最強ツールといってもいい。
オートスクロールからメンバーへの配布まで、ライブに完全特化
OnSong for iPad (600円)
ギター1本で弾き語りをしたことがある人なら、すぐにこのアプリのありがたさが実感できると思う。もちろん、バンド演奏でも威力を発揮するだろうね。
まずは、アプリを起動してみましょうか。
まずはWelcomeメッセージ。この時点でアプリの中には1枚のコード譜も入っていません。自分で1から作成することもできるんだけど、手っ取り早くインターネットから入手してみます。
左上の[Songs]ボタンをタップして、ポップアップの左下[All Songs]をタップ。でもって左上の[+]ボタンをタップだね。
一番下の[Import from Internet]を選びます。
検索窓に、入手したいコード譜の曲名を入れます。実際にやってみるとわかるのだけど、よほどマニアックな曲でない限りなんでも見つかりますよ。今回はビートルズの『Help』を探してみた。
ずらりと出てきましたね。いろんなアーティストの『Help』が並ぶ中で、Beatlesのものを選んでタップ。右上の青い[Import]ボタンをタップします。
[All Songs]の一覧に『Help』が登録されるので、曲名をタップします。
はい、歌詞とコード譜が出ましたね。基本的にこれだけでも充分なんだけど、OnSongはこのペラッとしたコード譜の見栄えにいろんな味付けをしてくれますよ。
ツールバー右上の[A]アイコンをタップ!
このツールパレットにうれしい機能がいっぱい詰まってるんだね。まずはフォントから。[Marker]を選ぶと、上図のようにJazz風の表示に変わります。
その下の[Font Size]コントローラーで歌詞部分の文字サイズを変えられる。
演奏中は意外と文字が見にくかったりするからね。17ポイントくらいがおすすめかな。さらにその下[Chord Size]はコード部分の大きさを変えるコントローラーだね。
歌詞よりもコード重視ならこのくらい大きくてもいいね。
ほかにも、[Chord Highlight]でコード部分にマーカーのような色を付けたり……
[Chord Style]でコードの文字色を変えたりもできる。
一番下のボタン群は、表示要素の指定だね。タイトル部分をカットしたり、歌詞だけやコードだけの表示もできますよ。便利なのはやっぱり[Tabs]ボタンかな。これをオンにすると……
ギターのタブ譜も見せてくれる。でもって、圧巻というかオレが一番気に入っているのはこの機能。たとえば、同じビートルズの『You Can’t Do That』という曲をインポートしてみたら……
なんと! あろうことかキーが「D」になってしまってる。この手のコード譜はユーザーが耳コピしたものだからね。だれか別のアーティストのバージョンを採譜してしまったんでしょう。他の曲のキーは忘れても、『You Can’t Do That』が「G」ってのは忘れようがない。
このままでは使えないので、先のツールパレットから[Transpose]のコントローラーを使ってキーを「G」に指定します。
はい、見事に「G」に移調できました。これ、単なるテキストかと思いきや、OnSongに読み込まれると移調までできちゃうってのはすごいと思うな。しかもこれ、セッションやるときなんかに、その場でキーが変わったりしても対応できてしまうよね。うーん、便利です。
1つ注意したいのが、インターネットからコード譜を入手する際のフォーマットですね。上の図のように、歌詞の上にコードが乗っている形式じゃないとダメ。なかにはこんなのや……
こんなのがあったりする。
しかも、一覧の表示ではどのコード譜がOnSong対応なのか、実際にダウンロードしてみて表示させないとわからない。曲によってはなかなか歌詞+コード譜が出てこなくてイライラすることもある。このあたりはもう少しわかりやすいといいね。
はい、驚きの機能はここからですよ! コード譜をダウンロードして見栄えを自分好みに整えたら、左上の[スピーカー]アイコンをタップします。このアイコン、オレの場合、なぜか左手の親指で押さないと反応してくれません。なんでだろう?
上のようなポップアップが出てきます。一番上に[No Song Selected]と出るまで左にフリックして、そのすぐ下の[音符の付いたフォルダ]をタップします。
iPodに入っている曲一覧が表示されたら、コード譜と同じ曲を選びます。今回は『Help』ね。
一番上の[右向き三角](Play)をタップすると、曲が再生されると同時に、右側に時間が表示されます。これは、曲の長さが何分かを設定するためなんですね。再生されている間に、その下の[人差し指]アイコンをテンポに合わせてタップします。
タップするごとに[BPM]の数字が変わります。これで曲の速度を測るんだけど、実際には[人差し指]アイコンのタップだとなかなかうまくいかない。そこで、こんなメトロノームを使ってもっと正確に測ってみます。
BOSSのDr.Beat DB-30(2.500円)。オレの愛用品です。上の[TAP/MUTE]ボタンを曲に合わせて叩くと、正確なテンポが測れます。『Help』は後半、どんどん早くなるんだけど、だいたい96BPMくらい。
BPMは1分間に何拍分演奏されるかを表す単位。96BMPは1分間に96拍ってことですね。60BMPは1分間に60拍だから、1秒と同じテンポってこと。
そこで、先のポップアップから[METRONOME]のコントローラーをスライドさせて、「96」に設定します。さらに、歌詞を見て1行の中に何拍くらい入ってるかを確かめます。実際に歌いながら、「1、2、3、4」と指を折る感じだね。
『Help』のコード譜はけっこう適当で、1行に4拍の部分もあれば、12拍くらい入っているところもある。あとで紹介する編集機能で同じ拍数になるように改行してもいいんだけど、だいたいの平均値を割り出すのがおすすめ。けっこうアバウトで大丈夫です。
でもって、その数字を[BEATS PER LINE]に設定します。オレは8拍としておきました。
これが最終的な『Help』の設定だね。曲の長さが「2分19秒」、テンポが「96BPM」、1行の拍数が平均で「8拍」、その下の拍子は4分の4拍子の曲だから「4/4」を選んでいます。
さて、なんでこんな面倒なことをやったかがこれから明らかになりますよ。画面右下にうっすらと見える[Auto Scroll]ボタンに注目。これをタップすると……
なんと、曲に合わせて、本当にいい感じで自動スクロールしてくれるんですね。しかも、左上の[メトロノーム]アイコンをオンにしておくと、上のようにツールバーが「赤、黒、赤、黒」とテンポに合わせて点滅する。音が出ないメトロノームってことだね。
もちろん、観客には見えないからテンポに自信がない曲なんかはこれを使うと安心ですね。このオートスクロール、個人的にはほんと「待ってました!」って感じです。
ちなみに、コード部分をタップすると……
こんな風にタブ譜が出てきます。こちらはギターだけじゃなく、ピアノ、ウクレレ、マンドリン、バンジョーまであるからすごいね。よくできてるわ、このアプリ。
こんな感じで1曲ずつ下準備をして、ライブで演奏する曲が貯まってきたとします。全部やるわけにはいかないから、本日のセットリストを作らなきゃだよね。
左上の[Songs]をタップして右下の[My Sets]を選びます。左上の[+]ボタンをタップすると……
[New Song Set]のポップアップが出てきます。「今日のライブ」など適当な名前を付けて[OK]をタップ。さらに[Pick Songs]をタップして、本日の演奏曲を選んでいきます。
こんな風にセットリストが完成します。右上の[Edit]をタップすると、曲順を変えたり曲を削除したりできます。
これで終わりじゃありませんよ。バンドのメンバーにこのセットリストを配りたいじゃないですか。もちろん、全員がiPadを持っているという前提で!
左上のツールバーから[iPad+矢印]アイコンをタップします。
一番右の[Bluetooth]アイコンをタップします。ちなみに「1」とある数字は通信可能なiPadの数だね。バンドのメンバーがあと3人いて、みんなiPadを持っていたら「3」と表示されるってこと。
バンドメンバーのiPadにはこんなポップアップが出てきます。
「相手からソングセットが送信されてるよ。受け取る?」てなメッセージだね。[Accept]をタップすると、先に作成したセットリストとそれに含まれる全曲のコード譜が送信される。うーん、やっぱりバンドメンバー1人に1台、iPadの時代ですね。お金かかるわ。
OnSongのおもな機能はこんな感じなんだけど、実はまだまだいろいろとあるんだね。たとえば、上のポップアップから[export files to iTunes file Sharing]を選ぶと……
PDFやHTMLファイルで書き出しもできる。このファイルはパソコンと同期した際にiTunesのファイル共有に読み込まれます。
あとは、こんな注意書きを付けたり……
右上の鉛筆アイコンをタップしてコードや歌詞を書き換えたりもできる。
その際は上のような「Chord Picker」なる入力補助機能まで付いているから驚きだね。すごすぎ! 先に解説した「1行に何拍分あるか」も、この編集機能を使って改行を入れたりすれば一定にできます。
とどめはこのビデオ! なんとこのアプリ、USBフットペダルでの操作やVGAアダプターの出力にも対応してるんだね。
よくもまぁ、たかがコード譜にこれだけの機能を詰め込んだものだと思うね。よほどの愛着と思い入れがないとここまでやれないと思うな。思いっ切り拍手を送りたい気分だね。
実は、このアプリに読み込んでいるコード譜って、ずっと以前からウェブ上で公開されていたものだよね。実際に活用していた人も少なくないのでは。でも、これまでは単なるテキストファイルに過ぎなかった。プリントアウトして使うのが関の山。
それがiPadのアプリに読み込まれると、ここまで進化するんだからすごいよね。オレもこれを手にしてから、ライブがやりたくてやりたくて仕方なくなりました。早く、iPadを譜面台に置いて演奏したい!
というところで、今日はおしまい。やっぱり、大作アプリをレビューするのは楽しいけど大仕事だね。当初の予定より大幅にはしょってこの量だから。また、おもしろいの見つけてきます。
ああ、そうだ。そういえば9月8日にKNNの神田さん(@knnkanda)と合同セミナーをやるんだけど、そのプレイベントを明日の夕方からUSTで放送します。#12keysに詳細をツイートするので、ぜひ、チェックしてみてください。では、また!
on song買ってみましたが、Macから漢字が化けますね。
色々試してみましたが、PDFかリッチテキストじゃなきゃダメみたい。
PDF,リッチテキストだとコードの移調や色変えができないので機能半減です。
何かいい方法ご存知でしたら、ご教授いただけませんか。
自己レスですが、色々試しているうちに分かりました。
エディタはMiを使ってエンコードをUTF-8、行末をCR(Mac)にするとうまく漢字も取り込めるようです。
akionさん
コメントありがとうございます。そうですね、この手の海外アプリの場合、多くはUTF-8のみに対応しているようです。
またよろしくお願いします!
記事を読み、とても良さそうだったので購入しようと思いましたが、
App Storeでは購入できなさそうです。
方法を教えていただきたいのですが。
粗製濫造さん、コメントありがとうございます。
記事からStoreへのリンクが変わってしまったようですね。アプリのAppStoreから直接「OnSong」で検索すると出てきます。やってみてください。
sonostyleさま
機能の時点では、AppStoreから検索しても出てこなかったんですが、
今やったら出てきました!!
早速購入して試してみたいと思います。
PDFでもスクロールできるようになるともっと良いですね。
探していたアプリでした。ありがとうございました!