ウェブやビデオも映せる非線形プレゼンアプリ登場! 〜 nonelinear

 

ビデオの世界には「ノンリニア」とい編集方式がある。ビデオデッキを複数台使って、必要部分をコピーしながら行う旧来のリニア編集に対して、ノンリニア編集はパソコンに取り込んだデジタルビデオを使うため、切ったり貼ったり自由自在にできるというわけ。

言葉の意味でいうならば、リニアは「直線、線形」で、ノンリニアは「非直線、非線形」。たとえば、パワーポイントやKeynoteで作るスライドは一方向に進む線型だよね。今日、紹介するのはiPadのプレゼンテーションを大きく変えてくれそうな「非線形プレゼンテーションアプリ」。ビデオやウェブもふんだんに盛り込める、ひさびさにワクワクする逸品ですよ!

まずは、どんな場面でこのアプリが活躍しそうかを書いておこうかな。パワーポイントやKeynoteなど、これまでのプレゼンテーションソフトとは明らかに一線を画するツールだからね。

1つは、似たようなテーマでなんどかプレゼンテーションをしたことがあり、すでに多くの素材を持っているような場合。たとえば、「ソーシャルメディア」がテーマのプレゼンでも、「パーソナルブランディングにおけるソーシャル」と、「ECにおけるソーシャル」では中身が異なってくる。

でも、実はかぶる部分もけっこうあったりするんだよね。これまでなら、すでに作成した「パーソナルブランディング」のスライドから流用できる部分をコピーしたり、手直ししながら「EC」向けのプレゼンを再構築していた。

このアプリを使えば、1つのテーマについてのプレゼンを重ねるたびに、こうした再構築の作業が楽になっていくように思うんだね。

2つ目は、社内や部内で行うような、よりブレストに近いプレゼンだね。以前から、オレは身内相手のプレゼン資料を作成するのに多くの時間を割くのはムダだと感じていた。クライアント相手ならまだしも、酸いも甘いも知り尽くした仲間内だからね。わかればいいんじゃないかと思うわけです。

しかも、この手の社内や部内プレゼンなら、きっちり作り込んだスライドよりも、参考になりそうなビジュアルをガンガン見ていくほうが楽しいし、アイデアも膨らむ。まさに、線型じゃなくて非線形がピッタリ来るんじゃないかな。

そんなわけで、従来のプレゼンテーションの概念を根底から覆してくれそうなのがこのアプリ!

スライド、ビデオ、画像、ウェブを並べてノンリニアに見せる
nonelinear (1,200円:iPad版)
nonlinear - Keetsy Corporation

その名もnonelinear。非線形なのに真っ直ぐな名前だよね。オレ自身、これまでもプレゼンにiPadを使うことにかなりこだわってきた。iPadを手にして以来、よほどの理由がないかぎりパソコンを使うのはやめた。だからこそ、このnonelinearとの出会いにはものすごくワクワクしたねぇ。

まさに、iPadだからこそ実現できたノンリニアなプレゼンという感じ。これがパソコンソフトだったら、かえって使いにくいだろうし、あまり必要性も感じないだろうね。1,200円という価格はKeynoteアプリと同じだけど、プロの道具としては高いと思わない。nonlinearを知ったいまとなっては、むしろKeynoteに物足りなさを感じるくらいだね。

じゃあ、こいつを使ってどんなことができるのか、ノンリニアってどんなプレゼンなのかを、さっそく見ていきたいと思います。

アプリを起動しますよ。

これが最初の画面。[New Presentation]をタップして新しいプレゼンテーションを作成します。その下の[Load saved presentation]は、すでに作成したものを読み込む際に使います。

このアプリ、現時点ではiOS 4.2のマルチタスクには対応していないから、起動するたびに[Load saved presentation]からプレゼンテーションを読み込むことになるんだね。

じゃ、[New Presentation]から新規作成してみましょうか。

まずは、プレゼンテーションに名前を付けます。その上に読み込めるファイルの拡張子が見えているよね。PDFとJPEGに、Keynoteとパワーポイントのスライド。「mov」はQuickTimeビデオだけど、実際には「mp4」形式のビデオのみに対応しているみたいだね。

名前を入力したら、[Import file]の文字をタップ!

続いて、使用するファイルをアプリに読み込みます。

とても残念なことに、nonelinearはクラウドサービスとの連携にはまったく対応してません。iTunes転送か、FTPで自分が使っているウェブサーバーにファイルを上げておくかの2者選択のみ。うーん、本来なら納得いかないところなんだけど、機能の斬新さに免じて、今回は大目に見ておきましょうか。

ぜひとも、Dropboxからの読み込みに対応してほしい。作者にリクエストを出しておきます。

でもって、パワーポイントやKeynoteで作成したスライドはPDFに書き出して読み込むのがおすすめだね。理由はiPadに読み込むと、フォントやレイアウトが崩れてしまうから。詳しくは、前回のPDF特集を参照してください。

今回は、PDF化したスライド2種類、JPE画像3点、オレがYouTubeに上げたビデオ1点を、まとめてiTunesで転送してみました。読み込むファイルの右側の丸にチェックを付けて、[Import and Edit]をタップします。

はい、こんな感じで、スライドはページごとにサムネイルが表示され、画像やビデオも1枚のスライドとして並びます。この際に、すべての素材のサイズを揃えてくれるのが、このアプリの優れた点。

上部の真ん中に[9×9]という数字が見えてます。これはサムネイル表示の枚数を「縦×横」で表したもの。横を8枚表示にするのがおすすめかな。これで、縦スクロールだけでもっとも多くのスライドを一覧できるようになります。

数字部分をタップして……

右側のドラムを[8]にすれば、縦の枚数は自動的に設定されます。

先に書いたように、この時点で2種類の異なるスライドを読み込んでます。冒頭に例として挙げたように、ここから似たようなテーマですでに作成したスライドを素材にして、新たなプレゼンテーションを再構築していくわけです。

使わない素材がある場合は、左のツールバーから[×]アイコンをタップして……

スライドをタップすれば簡単に削除できます。

左のツールバーの下から2番目[左右の矢印]アイコンをタップすると……

ドラッグで好きな場所にスライドを移動できます。こんな感じで、使いたい素材を残して順番なんかも自由自在に並べ替えていけるんだね。

でもって、ここからがおもしろいところですよ!

たとえば、前回までのプレゼンテーションには登場しなかった新しいiPadアプリの画面ショットを追加したいと思ったとします。

好きなアプリを起動して[ホームボタン]と[電源ボタン]を同時に押せば画面ショットの撮影完了。nonelinearに戻って、左のツールバー一番上の[+]ボタンをタップすると……

最初に出てきたファイルの読み込み画面が現れます。[Import from device]をタップするとiPadのフォトアルバムに保存された画像の一覧が出てきます。あとは、撮影した画面ショットを選ぶだけ。

読み込んだ画像をタップしてみると……

おっと、iPadで横置き(ランドスケープ)の画面ショットを撮ると、上のように画像が縦になっちゃうんだよね。こういう場合は、無料のAdobe Photoshop Expressなんかを使って回転させればOK。Photo-Sort for iPad(230円)というアプリを使えば……

こんな風に、複数の画像を選んで一発で回転させられます。nonelinearを使うんだったら、この手のiPadだけで完結するノウハウがかなり役に立つんじゃないかな。

画像の次はウェブページを読み込んでみましょうか。実際のプレゼンでウェブを見せたいときってけっこうあるんだけど、スライドと一緒にウェブを読み込めるアプリが意外と少ないんだよね。以前に紹介した2Screensも、できるといえばできるんだけど、使い勝手がちょっと複雑だった。

その点、このnonelinearは操作も簡単。

左のツールバー上から2番目の[+]アイコンをタップします。サムネイルの一番最後に作成される真っ白な新しいスライドを選んだら、[WWW]と書かれたアイコンをタップ!

URL欄にウェブのアドレスを入れて[Go]をタップだね。

はい、こんな風に生のウェブページが読み込まれます。「生」ってのは画面ショットじゃないってこと。スクロールもできるし、リンクをクリックして別のページにジャンプもできる。うーん、こうして素材を集めてるだけで、本番が楽しみになってくるよね。

ちなみに、白紙のスライドから[ピースマーク]アイコンをタップすると……

こんな手書きのホワイトボードになったりする。だけど、コイツは反応があまりにお粗末。丸を書いたら三角になってしまうほどのレベル。現バージョンのものは本番で使わないのがおすすめだね。

はい、気を取り直してオレが最高に気に入ったビデオ素材を見てみましょうか。まずは、最初に読み込んだmp4ファイルね。ちなみに、FireFoxのアドオン「Video DownloadHelper」あたりを使えば……

こんな風に、YouTubeから簡単にmp4形式のビデオをダウンロードできますよ。

じゃあ、サムネイルの一覧からビデオをタップしてみましょうか。

おお、ちゃんとプレイボタンが表示されてるね。プレイボタンを押してみると……

プレイヤーが起動してビデオが再生されました! もちろん、この動画はVGAアダプターをとおしてプロジェクターにも映ってますよ。気になる音声は、iPadのヘッドフォンジャックから出せるし、話題のAirPlayを使ってAirMac Expressにつないだスピーカーから出力する手もあるね。

なんて、さらっと解説してますが、これまでiPadのプレゼンアプリで動画が流せるものってなかったと思うんだよね。これって、実はものすごく画期的な機能じゃないかな。うん、ますます広がるiPadプレゼンテーションの世界って感じだね。

さらにさらに! YouTubeの動画をダウンロードせずにこのアプリの中に読み込めてしまうんです。これね、実際にテレビのモニターにiPadをつないで実験してみたんだけど、ちょっと鳥肌ものですよ。

まずは、先のウェブページを読み込んだのと同じ手順で、URL欄にYouTubeの動画リンクを入れます。もっとも簡単なのは、パソコンのブラウザーでYouTubeの動画を開いて、URLをコピー&Evernoteにペーストかな。mp4用のリンクじゃなく、いわゆるパソコン用のリンクで大丈夫です。

iPadのEvernoteを立ち上げて、パソコンからコピー&ペーストしたURLを再度コピーしてnonelinearのURL欄に貼り付けます。

[Go]をタップすると……

おお、先のビデオと同様に再生ボタンが見えてるよね。これをタップすると……

YouTubeアプリが起動することなく、Nonelinearの中でバッチリ動画が動き始めます。しかも、プロジェクターにはフル画面の動画として出力されるってのがすごいね。もちろん、AriPlayによる音声出力もしっかり使えますよ。

さて、かなり盛りだくさんだったけど、これで使いたい素材はすべて揃いました。ありもののスライドから新しいプレゼンに使えそうなものを抜粋し、並べ替え、画像やウェブページ、YouTubeの動画も追加して、かなりゴージャスなプレゼンテーションが整ったというわけ。

さて、ここからがnonelinearのノンリニアたるゆえん。ちょっと普通の操作方法とは違いますよ。上部の[13×8]の左側にある[プレゼン]ぽいアイコンをタップすると……

[Start Presentation?]というポップアップが出てきます。[Detect & display on external monitor]をタップすると、スライドがプロジェクターに出力されて本番開始。[Practice mode (just on device)]ってのがリハーサル用のボタンだね。こいつをタップしてまずは練習かな。

1枚のスライドを表示させると……

はい、こんな風に、このスライドの縦横斜め、八方向に隣接したスライドが見えてます。つまり、前後だけじゃなく、縦横斜めのどこにでも飛べるというわけ。この際、小さなサムネイルをタップしてもいいし、上下斜めにフリックしてもOK。とくに、このフリックでの操作が気持ちいいね。

もちろん、八方向に置かれたサムネイルはプロジェクターには映りません。観客に見えているのは真ん中の大きなスライドだけ。

さらに、画面左下にある5つのボタンから[4枚の四角](サムネイル)ボタンをタップすると……

すべてのスライドがタイル状に表示されます。この状態でも、プロジェクターに映っているのは最後に選んだスライドだけ。

つまり、このnonelinearでは、現在表示しているスライドを取り囲む八方向の別のスライドに飛ぶか、タイルの中から次に見せたいものを自由に選ぶかの2つの操作方法があるということ。

どうでしょう。パワーポイントやKeynoteでスライドを操作するのとは、まったく別の世界がありそうだよね。たぶん、このアプリを使いこなすには頭を切り換えなきゃいけない。

シナリオをしっかり創って、順番に話しを進めていくというよりも、ある話題に合わせて見せたいスライドを出し、そこからその場の流れで別のテーマに切り替えて、またそれに沿ったビジュアルを選んでいく。

従来のプレゼンが譜面どおりの演奏だとしたら、nonelinearを使った非線形プレゼンはインプロビゼーションの世界。その場の雰囲気やオーディエンスの反応によって次々と話題を変えていく、まさに一発勝負、アドリブワールドなわけです。

しかも、スクロールやリンクをクリックしながらのウェブページや、写真、画像に加えてYouTubeの動画まで盛り込めるんだからね。弾はめちゃくちゃ充実している。あとは、話者の腕次第ってところかな。それなりのスキルは要求されるけど、このアプリが使いこなせるようになれば、コツコツとスライドを作成する時間は圧倒的に短縮されるよね。

いやー、オレはしばらくこのnonelinearで、非線形かつアドリブ盛りだくさんのプレゼンテーションに挑戦してみたいな。約束されたお話とは別の楽しさというか、説得力がありそうな気がする。

ただ、このアプリ、これほどの機能を詰め込んだだけあって、問題点はたくさんあります。最後に、現バージョンでの注意点を挙げておきますね。プレゼンは一発勝負だから、このあたりが修正されないと安心して使えない。素晴らしいアプリだけに、早期の改善を期待しています。

  • 大量の素材を読み込むとアプリが落ちる
  • ウェブページのスクロールがプロジェクターに出力されるのに時間がかかることがある
  • ブラウザーに戻るボタンがないため、リンクをクリックしたあとに元のページに戻れない
  • 動画を再生するとたまにアプリが落ちる

アプリが落ちる問題はおもにメモリー不足に原因があると開発元のウェブサイトに掲載されてますね。改善を急ぐともあるので、今後のアップデートに期待です。

現時点の対策としては、プレゼン本番前にiPadを再起動しておくこと、バックグラウンドでメモリーを消費する他のアプリを起動しないこと、あたりかな。最初は社内や部内向けの利用で様子を見て、問題なさそうだったら大舞台で使うってのがよさそうだね。

月に1本くらいなか。この手のあっと驚くアプリに出会えるのは。たいていは、未完成な部分を持ち合わせていたりするんだけどね。でも、そういうアプリの多くが数か月後には見事な完成ぶりを見せてくれたりする。このnonelinearもしばらくは追いかけてみたいものの1つですね。

そんな感じで今日はおしまい。いつか、nonelinearで非線形プレゼンをやる機会に、皆さんとお会いできるのを楽しみにしています。では、また!

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