情報発信のための情報収集 ① 〜 準備・収集編

 

先月から今月にかけて、アップルストア銀座のワークショップや、シゴタノさんのセミナーで『情報発信のための情報収集』をテーマにお話をさせていただきました。

ただやみくもに集めるだけでなく、ある形で発信することを目的にした情報収集とは。セミナーにお越しいただいた方へのリキャップもかねて、2回にわたってまとめてみたいと思います。まずは、準備から収集までの流れです。

【Step 1:アウトプットを明確にイメージする】

最初のステップは「どんな形でなにをアウトプットするか」をはっきりさせることです。この際に、情報収集を「底網漁」にたとえてみるとわかりやすいと思います。

最初に網を仕掛けてざっくりと獲物を捕らえます。この状態では、イカやタコやヒラメに鯛、エビやカニなんかがごった煮状態で混ざり合っているはずです。

そこで、漁に出る前に「自分はなにを獲るために網を仕掛けるのか」をしっかりと決めておくわけです。船の大きさは限られています。あれもこれもと欲ばりすぎると、狙っていた獲物を運ぶスペースはすぐになくなります。

獲りたいのはイカなのかタコなのか。

もし、イカと決めたらタコには一切目をやらず、網に引っかかったとしてもその場で海に帰してやります。

次に、「捕まえたイカをどんな形で世に出すか?」をイメージします。刺身用なら新鮮なネタが必要ですが、スルメにするなら鮮度はそれほど重要ではないかもしれません。すり身にしてしまうとしたら、少々傷がはいっていても大丈夫でしょう。

つまり、「加工する形」を決めるわけですね。ブログなのか、USTなのか、YouTubeなのか、あるいはツイートするのか。ブログだとしたら、レビューなのか、自分なりの使いこなし術なのか、比較記事なのか、はたまた事実を伝えるのみの速報なのか。

獲物を絞って加工先を決める。これだけで、自分にとって必要な情報がなにかはかなり明確になるはずです。面倒でも、この課程をしっかり踏まえておくかどうかで、情報収集の質が大きく変わると思います。

【Step 2:陥りやすい罠に注意しておく】

オレは10代後半から30代の初めころまで、アナログレコードのコレクターでした。集めた枚数は3000以上。それこそ、マニアが泣いて喜ぶ貴重盤が6畳一間の狭い部屋にびっしりと詰まっていたものです。

コレクターというのは不思議なもので、どうしても「全部を揃えたくなる」性を抑えられません。本当に聴きたいレコードだけを買うのではなく、「これも持ってなきゃダメだ。あれも欠かせない」といったおかしな動機から、次第にいらないものを大量に集めるようになります。

コレクションそのものが目的なら、まったく問題はありません。でも、「いい音楽を聴きたい」が目的だとしたら、本道からは大きくそれた行動なわけです。オレの場合、3000枚のうちでしっかり愛聴していたのは5分の1程度だったと思います。

また、「これは持っていると人に自慢できるかも」と、生き字引になりたい欲もどんどん大きくなっていきます。いつしか、万能選手を目指してしまうんですね。興味があるかないかにかかわらず、「知ってなきゃいけない」という、これまた変な脅迫観念に駆られだしたら要注意です。

結論を言えば、オレは「偏るくらいでちょうどいい」と思っています。これだけ情報があふれている時代では、広く浅くよりも、深く狭くのほうが価値があるんじゃないかと。

本当は広く深くが理想ですが、わずか80年の人生ではそう簡単に実現しないでしょう。ならば、偏って上等。それこそがオレの個性だといい切るほうが自然です。

生き字引ではなく、興味がある分野をとことんDiggしていく。欲ばるとあとで痛い目に遭う。オレは日々、この2つを肝に銘じるようにしています。

【Step 3:うまくいかなかった過去を精算する】

小学生のころにカブトムシを飼っていました。最初は楽しくて、毎日、スイカや蜂蜜を綿にしみこませたものをカブトムシの箱にいれてやります。ところが、興味が薄れるにつれて次第にエサをやらなくなってしまいます。そうなると、カブトムシの箱を空けるのが本当にイヤになってしまうんですね。

シーモンキーのときもそうでした。濁った水が入った容れ物を見たくないあの気持ち。

RSSリーダーに溜まった未読の記事。iPhoneのアイコンには「1000+」というバッジが付きっぱなし。「あとで読む」に放置されたサイトの数々。EvernoteのInboxにクリップされたまま未整理のノートたち。

おそらく、だれもが「いつかキレイに片付けてやる」と思い続けているんじゃないでしょうか。オレも何度もそういう状況に陥りました。なんとか時間をとって「あとで読む」に目をとおそうとしても、そこにあるのは2週間前の記事ばかり。

片付けてもかたづけても、次からつぎに新しい記事が送られてくる様は、借金で首が回らなくなった状態によく似ています。オレはリアルでそういう目に遭ってきたので、このたとえには自信を持っています。

そこで、思い切って「うまくいかなかった過去」を精算してしまいます。RSSリーダーに大量の未読記事があれば、リーダーアプリの「既読にする」ボタンを押して、一度完全に未読ゼロにします。

Read It LaterやInstapaperなら思い切って新しいアカウントを作成し、それまでに溜め込んだサイトに別れを告げます。もちろん、旧アカウントでログインすればいつでも閲覧できるので、その気があれば暇なときに少しずつ整理してもいいでしょう。

Evernoteは? さすがにアカウントの切り替えは難しいでしょう。だったら、「過去の清算」などのノートブックを1つ作成して、その中に入れておくのがいいと思います。アーカイブにしておく手もありますね。

とにかく、心機一転、新たなスタートを切るにあたって、溜め込んでしまったどうにもならない情報をいったんゼロにしてしまうこと。これが重要だと思います。

ただし、同じことを何度も繰り返すのはやめたほうがいいでしょう。精算しながら、「次はおまえたちにちゃんとエサをやるからな」と固く決意することも忘れてはならないと思います。

【Step 4:Googleリーダーでプライオリティーを付ける】

次に、Step 1とStep 2を踏まえて、RSSリーダーアプリで購読するサイトを厳選します。オレの場合、獲る魚と加工する先を次のように定めました。

  • Apps(アプリ情報):ZONOSTYLE、書籍
  • Articles(サービスや業界動向):ZONOSTYLE、セミナー
  • Howtos(ハウツー):ZONOSTYLE、書籍、セミナー
  • Products(製品情報):ZONOSTYLE、書籍、セミナー
  • Stats(統計):セミナー、コンサル

「Apps」や「Articles」は選りすぐった情報をプールしておくEvernoteのノートブック名にあたります。(アプリ情報)などが、獲りたい魚の種類、ZONOSTYLEや書籍が最終的なアウトプット、すなわち加工先です。

「Stats」は「日本のFacebook人口が200万を超えた」などの統計データです。ブログや書籍ではあまり使う機会がありませんが、とくにコンサルやセミナーの現場でこの手の数字について質問されることが多いんですね。オレにとってはある意味、なくてはならない情報であるわけです。

つまり、アウトプットとはブログなどの執筆だけでなく、「新しいサービスの企画」「仕事での会話」「プレゼンのスライド」など、ある情報が必要な行動全般と捉えるのがいいと思います。

まずは、これらのアウトプットに必要と思えるサイトをピックアップします。さらに、RSSリーダーアプリでざっと目をとおして気になるものを「あとで読む」に送るというプロセスを「1時間以内」で完了できるように数を絞ります。

オレの場合で1日700記事が限界だとわかりました。

なぜ1時間以内かというと、オレが毎日続けられる限界値だからです。これが90分、2時間となると、例によって明日以降に持ち越しが続出することになります。その結果は? もちろん、開けられないカブトムシの箱ですよね。

ただし、絞り込むにあたって、どうしても捨てがたいものも出てきます。さらに、日々、新しいサイトを発見することもあります。そこで、オレはフォルダーを使ってすべてのサイトを3つのプライオリティーに分けてみました。

  • 毎日読む
  • 空き時間に読む
  • いつか読む

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どこかで見たことがあるようなラベルですよね。GTDの行動に付けるプライオリティーに似ています。

上図の「iPhone」(iOSデバイス系の記事)、「IT News」(IT全般の記事)、「Mac」(Mac系の記事)の3フォルダーがオレにとっての「毎日読む」にあたります。

ここには1時間でチェックできる700記事分しか入れません。その他は、興味の強さによって「空き時間に読む」や「いつか読む」に振り分けます。もちろん、これらはその日に確認できなくてもまったく気にしないことにします。

ただし、週に一度くらいはすべてのフォルダーに軽く目をとおして、気になるものがあれば「毎日読む」を入れ替えたりします。いいサイトを新たに発見した場合もまったく同じです。一軍と二軍の入れ替えのようなことを定期的に行うわけです。

もし、3つの分類がわかりにくければ、「毎日読む」と「空き時間に読む」の2段階でもいいかもしれません。

【Step 5:Reederで収集する】

アウトプットのイメージが固まり、1日で処理できる本数に記事を絞り込んだら、いよいよ情報収集の実践が始まります。

試行錯誤の末、収集、見極め、整理の3ステップを、3つの異なるツールにバトンタッチしていくフォーメーションにたどり着きました。最初の収集はもちろん、RSSリーダーアプリです。

私のおすすめはこれ!

左フリックでRead It Laterに送れる最速処理リーダー
Reeder(350円:iPhone版)Reeder - Silvio Rizzi
Reeder for iPad(600円:iPad版)Reeder for iPad - Silvio Rizzi

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このアプリを選ぶ最大の理由は、このあとのプロセス「見極め」に登場するRead It Laterとの連携がものすごくスムーズだからです。なんと、記事見出しを左にフリックするだけでOKなんですね。

RSSリーダーでのチェックは、一瞬の勝負だと思います。じっくり読むのはRead It Laterに行ってから。つまり、どれだけ短い時間で必要そうなものかそうでないかを見分け、気になったものを素早くRead It Laterに送れるかが決め手になります。

とくに、iPad版での操作感が素晴らしいですね。左手の親指で下向き矢印をタップしながら記事を送り、気になったら同じ親指で左にフリック。たったこれだけのアクションでガンガン飛ばしていけます。

iPhone、iPadともに、アプリの設定画面で[Slide Left to]の設定をしておくのがポイントです。

reederset.jpg

ここでもう一度、Step 2の「罠」の話を思い出します。コレクターになろうとしていないか、生き字引になろうとしていないか。最初のうちは、Read It Laterに送ろうと思った瞬間にチェックしてみるのがおすすめです。

このやり方をはじめて2か月ほどが経ちましたが、やっぱり最初のうちはイカと決めたのにエビや鯛を捕りに行ってしまうんですね。欲張りすぎると、Read It Laterでの見極めの際にドカーンとしっぺ返しをくらいます。絞り込む、割り切る、ぜひ、自分に言い聞かせながら集めていってください。

以上が、収集までの5ステップです。このあと、Read It Laterに送った記事を見極め、Evernoteで整理し、「情報発信」につながるようにNozbeのアクションまで落とし込みます。こちらは次回にまとめてお伝えします。

今日は、NozbeのCEOマイケルと、シゴタノの大橋さんとのイベントです。拙著『Nozbeクリエイティブ仕事術』も発売されました。すでにいくつかの書評も書いていただきました。天気も良好、みなさんのおかげできっといい一日になると思います。では、また!

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